社内実験室2-4

シリコン入りマグネシアの絶縁抵抗について

1. はじめに

　カートリッジヒーターは、絶縁材としてマグネシアを使用しており、添加剤としてシリコンを加えたマグネシアを主に低温用として使用しています。
　シリコン入りマグネシアは、カートリッジヒーターの製造時に適度に加熱、乾燥を行うことにより絶縁性能を高めることが可能になります。
この実験では、乾燥温度の違いにより絶縁性能に差がでるかを確認します。

2．封口の違いによる絶縁抵抗に変化について

　シリコン入りマグネシアを使用したカートリッジヒーターの封口は、特に指定がなければ無封口（封口にセメントやシリコンを使わず、何も塗らない状態）とさせていただいております。
　無封口のカートリッジヒーターの一部は、非発熱部の酸化マグネシウム（ボビン）が露出しています。ボビンの材質はマグネシウムが99％含まれており、添加剤等が含まれていません。そのため、吸湿性があると考えられます。

　また、シリコンで封口する場合、封口材に使用するシリコンは密閉性、耐水性に優れているが、耐湿性が低く長期間放置すると吸湿すると考えられます。

　上記のことからシリコン入り酸化マグネシアを使用してもボビンやシリコンからの吸湿による絶縁抵抗の変化があるかを確認します。

3．実験条件と環境について

　乾燥温度、封口の異なる同一のカートリッジヒーターを作成し、室内に保管し、絶縁抵抗を定期的に検査、また、吸湿性の特性を確認するためにカートリッジヒーターと共に湿度計を設置し時間変化を記録します。

　乾燥温度は170℃と350℃の2種類、ボビン露出の有無の2種類、シリコン封口の有無の2種類になり、計8パターンのカートリッジヒーターを2本ずつの実験を行いました。以下に各パターンの表と図解を記します。

カートリッジヒーター各パターン図解

4．実験結果

　絶縁抵抗の値が下がったものは（4000MΩ以下）無封口、乾燥温度170℃のみでした。（1と2）ボビンの露出の有無では違いがみられませんでした。
　乾燥温度350℃のヒーターでは無封口状態でも絶縁の低下が起きなかったため、マグネシアに吸湿されていない、または吸湿されていても絶縁抵抗に影響を与えないようなっているものと考えられます。
　乾燥温度170℃のシリコン封口では絶縁が低下しなかったため、シリコンが吸湿を防いでいるものと考えられます。

　サンプル1，2番のそれぞれの2本のみを抽出したデータを表1に示します。
　絶縁抵抗の低下を起こしている日の湿度を見てみると、湿度70％を超えており、一方湿度70％を下回れば絶縁抵抗が回復する傾向にあります。
　　このことから、絶縁の低下は不可逆的なものではなく、湿度の変化とともに、吸湿と放湿の両方が行われているものと考えられます。

5．まとめ

　シリコン入りマグネシアを使用したヒーターは乾燥温度350℃で乾燥することにより絶縁低下を抑えることが可能になります。

　ヒーターの形状、サイズなどの問題により乾燥温度350℃に出来ないものはシリコンによる封口を行うか、湿度70％未満の状態での保管をすることにより絶縁抵抗の低下を防げるものと考えられます。

　ただし、長期間（数年）になる場合、シリコン封口からの吸湿が行われる可能性があるため、長期間の実験継続が必要と考えます。